【 episode 5・場面緘黙を越えて 】

小学4年生の男子で

場面緘黙と思われる子がいました。

場面緘黙とは、家などではごく普通に話すことができるのに、学校のような「特定の状況」で1か月以上、声を出して話すことができない状態が続く事をいいます。

この子は、お母さんとはお話しできるのですが、お母さん以外、お父さんともあまり話さず、学校等ではずーっと押し黙っていたようです。

確かに稽古の時でも声が出ず、

シーンとしたまま

声を出すのは稽古の重要部分ですので、

私は「声を出せー!」と言い続けました。

結局、小学校卒業まで大きく声を出せたのは一回だけ。

とはいえ、「えい!」という気合いは発する事ができるようになりました。

声が出てくると自信がついてきたのか、顔つきも変わってきました。

そうこうしているうちに、中学生活が始まったある日

凄く気力たっぷりな様子で、稽古にやって来ました。

何かあった? と聞くと、

生徒会に立候補して、全校生徒の前で演説してきた。とのこと。

稽古が、彼の内在する力を引き出したのだと思います。